さて、そのような状況に陥った 4 月から今までの間、区内の複数の小学校において、学童の保護者が自発的に動きだし、あるところはつながり、あるところは単独で、子どもたちになんとか「おやつ」を食べさせたいと活動をしてきました。
特に、多くの働く保護者がなんとかしたいと願ったのは、「夏休み」です。
夏休み中は、授業や様々な学校活動、多くのお友達に囲まれて変化のある毎日とは違います。日によっては、学校によっては、すくすくに数人しか来ない時もある夏休み。9 時から 18 時までを、すくすくホームルームを中心とした限られた範囲で過ごす学童の子どもたちに、おせんべい一枚、アメ一個でも口にさせて、お腹を満たすためだけではなく、心も満たすほっとしたひと時を作ってやりたい……そんな親の思いから発した、「せめて夏休みにおやつを」の願いです。
残された道は、「自主運営」。江戸川区が、「自主運営なら」、と一筋の道を垣間見せてくれた以上、保護者としてはその道を切り拓いてゆくしかありません。
しかし自主運営と言っても、具体的に実現可能な中身とは? 4 月の段階で、全く見え ていませんでした。そして多くの保護者が、各々、本件の担当部署に 問い合わせても、当会で把握している範囲では、明確な説明を得た保護者はいなかったとのことです。
どのような自主運営ならよいのか? どのような自主運営なら、働く親が、適切な時間に、学童保育に預けている子どもにおやつを食べさせることができるのか? その活動の報告は、当会に続々と舞い込み、多くのレポートとなって寄せられました。
本日より、「江戸川区・すくすくスクール学童 おやつ自主運営への道」と題しまして、 寄せられたレポートを掲載して参ります。
第一のケースは、7 月上旬、江戸川区教育委員会に「夏休み中の補食持参についての陳情」を出されたA小学校の学童保護者のケースです。
陳情本文をご紹介しましょう。
「江戸川区では今年度からすくすくスクール学童登録の子どもたちの補食が廃止されま した。
夏休みを目前に控えてのお願いになりますが、長期休暇中は長い子どもで朝9時から 夕方6時まで、ホームルームと校庭という限られた空間で生活することになります。暑い中過ごすため、普段より体力も消耗するでしょう。
そんな子どもたちに少しでもほっとできる時間を与えてあげたいと思っています。せめて夏休みにおきましては、補食を持参できるよう措置をお願いします」
なおこの陳情書は、「教育委員会陳情第 4 号」とし、こちら に掲載されています。
(「平成25年7月~12月」の部分をご覧ください)
さて、この陳情 4 号は、7 月 9 日に開催された「江戸川区教育委員会・第 13 回定例会」で審議されました。その委員会を傍聴に行った保護者の方が、当会にお寄せ下さったレポートをご紹介いたします。以下、投稿文になります。なお【注】は、当会による注釈です。
「7 月 26 日の教育委員会会議に傍聴に行った記録を送ります。固有名詞や細かい文言で正確 さに欠けますが、だいたいの主旨をお汲み取りください。
【注1】 教育委員会の議事録は、時間を待てば区から正式なものが公表されますが(会議録として、こちらにUPされます)、過去の例を拝見しますと、Web公開まで2~3ヶ月程度のお時間を要しておりますため、 傍聴に参加された保護者の方はメモで対応されたとのことです。
発言者は、次の方々です。
・浅野潤一教育長を含む、江戸川区教育委員会の構成者 全4名
・すくすくスクール担当の教育推進課長
さて審議です。
先にご紹介した陳情4号のほか、陳情5号も出ております。ほぼ同じ内容なので、ここで審議するということになりました。まずその内容の紹介がありました。
"......4 月から学童クラブ補食が廃止になり、子供たちは寂しくひもじい毎日を過ごしている。夏休みは 9 時から 6 時までと長く、子供たちの様子を考えると、 親として心配で不安で仕方がない。せめて夏休みだけは補食の持参をさせて欲しい......"
これを受けて、まず委員の方から発言がありました。
この方は、教育委員会としてどういう立場をとったらよいかを考察され、まず江戸川区教育委員会の基本方針【注2】を挙げました。
【注2】 江戸川区教育委員会の基本方針は こちら に掲載されています。
そして、この基本方針に立ち返るなら、教育委員会としては、最も子どもの成長を願っている保護者の意見を尊重し、補食についても前向きな検討をするべきではないか、という提言をされました。
区が当初挙げていた「肥満」などの補食廃止理由【注3】については、例えば、保存性に気をつけながら各家庭が子どもに持参させることで克服できるのではないか、という内容の提言をされたと思います。
【注3】 補食廃止の手紙の実物は こちら からダウンロードできます。
この発言について、すぐに直接の討論はなく、前回の教育委員会で学童クラブの現場に補食についての意見を聞くことを決めていたため、担当課長からその報告がありました。
課長
「前回の会議の提案で、全学童クラブで調査をすることになった。クラブマネージャーとサポーター【注4】あわせて 67 人の聞き取りをした。クラブマネージャーがいないすくすくスクールは 7 校ある」
【注4】 「すくすくスクール」における「クラブマネージャー」「サポーター」の位置づけについては、江戸川区HPの こちら をご参照ください。
「クラブマネージャー」とは、地域とすくすくスクールをつなぐ調整役、「サポーター」は地域のボランティアの方です。
クラブマネージャーは毎日来るとは限りませんし、サポーターは、主にサポートセンターの行事(児童向け各種レクリエーションなど)の時に、すくすくに来られているようです。
なお日々の児童の見守り、活動状況の把握は、「サブマネージャー」という区職員(保育士など子どもに関する有資格者)が担っています。今回は、このサブマネージャーからの聞き取りはなかったようです。
課長発言の続きです。
■質問1 子どもたちの 5 時以降の様子はどうか?
(クラブマネージャーまたはサポーターの回答)
何も問題なく、たまにお腹が空いたという子どもがいるが、子どもは順応性があり楽しくすご している。
■質問2 補食について必要と思うか
(クラブマネージャまたはサポーターの回答)
「継続したほうが良い」が 4人。
「必要な子には出すべきだ」が 3 人。
理由…あったほうが落ち着く。夕飯が遅いとかわいそうだ。
「なくなって良かった」が 60 人。
理由…なくていいと思っていた。差別がなくていい。
お腹が空いても我慢して夕飯を食べたほうがいい。
食べない子がいる中での補食には問題がある。
(このアンケートは、親が補食を用意することではなく、区が補食を出すことが前提になっているそうです)
この後、さらに別の委員から、すくすく職員に直接聞いた話として、「子どもが遊びに夢中になっている中で補食は不必要である」とか、「補食は夕方なので腐る心配がある」という意見を聞いたという報告がありました。
教育長からは、「補食を持参させて欲しい、自由に持って来られるという環境は、これまでやってこなかった。 すくすくスクール全体の共通の場で、共通の生活をさせたい。食べる子、食べない子がいるのは難しい。バラバラになってしまう。もしやるとなるといろんなことが起こる。いつどこで食べるのか、何を持ってくるのか。夏休みは時間が長いといっても、学校がある時と変わらない。そこに特別な配慮が必要かどうか? 全体が皆同じ生活ができるようにしたい。個別に持参させてくれというのは受け入れられない」
という趣旨の発言があり、委員2名からも、教育長に賛意を示す発言がありました。
補食を提供しない理由として、「すくすくスクールは教育の場でもある」「子どもに我慢させることも大事だ」ということも、ここで挙げられています。
また夏休みは一日が長いと言っても、「休息できる時間は設けており、水で水分補給できるよう配慮しており、夏休みだからといって特別な問題はない」という考えも示されました。
採択に関して、ここで壁を作らず継続審議とする提案もありましたが、委員長は採択不採択の結論を出すことを選択。挙手にて 採択 1 人、不採択3人。この陳情は不採択となり、約 30 分で審議は終了しました。
補食持参を支持してくださった一人の委員さんは、「子どもの人権尊重、健全な育成を願って、教育委員会と学校、関係諸機関、区民とが連携を深め、一人ひとりが安全な生活を送ることができるようにつとめていきます」という教育委員会の理念に立ち返るべきであることを訴えて いました。
一方、委員のお一人は、子どもから補食を取り上げておいて「子どもも我慢することが大事だ」と言い放ちました。
なんと大人の都合、行政の都合を弱い立場である子どもたちに押し付けたご都合主義でしょうか。
教育長が再三言っていたように、食べる子と食べない子を分けられないということを理由にするのであれば、全児童放課後事業と学童クラブを合体させたことそのもの【注5】が間違いだったと言わなければなりません。
【注5】 江戸川区は2003年、区内1校において試験的に、それまでの区の「学童クラブ」を、「全児童放課後事業(名称:すくすくスクール)」に統合。翌2004年には、区内の全小学校の学童クラブを、「すくすくスクール」に統合しました。
この統合当時も、学童の「おやつ」はいったん廃止の俎上に乗りましたが、学童保護者たちの強い働き掛けにより、学童保育時代の「おやつ」から「補食」と名を変え、提供時間や方法など変更しつつ、2012年3月末まで継続され、2013年4月から廃止となりました。
また質疑の中で、担当課長から、すくすくにかかわるスタッフ67 人に聞き取り調査をしたという報告がありました。しかしこの67人のうち、「クラブマネージャー」が何人か、「サポーター」が何人かは、報告がありませんでした。
さらに、子どものことを最もよく知るのは「サブマネージャー」です。実際に、これまで補食を出す役割だったサブマネージャーへの聞き取りがされていないことが疑問です。
「補食について必要と思うか」という質問は、具体的にどのような聞き方をしたかで答え方も変わると思います。補食が廃止されてしまった後に、行政執行者からこの質問をされて、あえて「必要」と答える人は、ある意味、区の施策に反対の意向を示す事になるわけですから、とても勇気が必要であることだと推察します。
この質問が、補食が廃止される前に、もっといえば午後3時半や午後4時ごろに補食が提供されていた頃にされていたなら、ほとんどの人が「必要」と答えたのではないでしょうか?
親が働く子どもたちが、毎日の放課後生活でおやつを提供されていた学童クラブ。その機能を奪っておいて、悪いほうの平等を押し付けるのは「他の人を思いやる心の育成に努めます」という教育委員会の理念からも外れるのではないでしょうか。
レポートは以上です。長文のご投稿、ありがとうございました。
本記事が、多くの方のご参考になれば幸いです。
今後また、他校保護者からのレポートをご紹介して参ります。